福岡家庭裁判所 昭和41年(家)807号 審判 1966年11月04日
申立人 香田孝子(仮名)
相手方 熊田敏夫(仮名)
主文
相手方は申立人に対し、金四万二、〇〇〇円を即時に、また昭和四一年一一月から申立人が小学校を卒業するまで六、〇〇〇円を毎月末日限り支払え。
理由
(申立の趣旨)
「相手方は申立人に対し、扶養料として月額七、〇〇〇円の割合による金員を申立人が小学校を卒業するに至るまで支払え。右以後の扶養料については更に協議する」との審判を求める。
(申立の理由)
申立人の父(相手方)母(申立代理人)は離婚し、申立人は親権者となった母によって爾後養育されて来ている。申立人は母と母方祖母の三人暮らしであるが、母が小学校教員として受取る手取り給料は月額二万五、〇〇〇円であるところ、住宅の払い込みに七、〇〇〇円を要するため、申立人は学童として充分な生活ができない。
父である相手方は高校教員であって、手取り給料は月額四万二、〇〇〇円である上、住居も自己所有家屋であり、健康な妹と暮らしており生活に余裕がある。
よって申立人は相手方に対し、一ヵ月七、〇〇〇円の割合による扶養料の支払を求める。
(裁判所の判断)
戸籍謄本、調査報告書によると、申立人は相手方と、申立代理人香田徳子との間に昭和三四年一〇月二二日に出生した長女であるが、右両親は同四〇年一一月一九日調停離婚し、その際親権者は双方とも希望したが、幼児であることも考慮され、母徳子と定められ、爾後同人において監護養育していることが認められる。
そうして申立人は小学校一年で扶養を要する未成熟者であることは明らかであるから、相手方および母徳子はいずれも親として申立人に対し、扶養の義務を負っているものというべきところ、申立人の母徳子は現在申立人と生活を共にしてこれを扶養しているから、相手方は金銭の支払をもってその義務を果すべきものと認める。
相手方はこれに対し引取り扶養を希望して扶養料の支払を拒絶しているが、申立人の年齢、更に経済的にはともかく、現在の環境で申立人が一応落着いて順調に成長して来ていることを考えると、相手方の主張は採用できない。
ところで前記双方の負担すべき扶養料の割合は、その資産収入、相互の生活状況等一切の事情によってこれを決すべきである。
そこで相手方が負担すべき扶養料の額について判断する。
前掲証拠によれば、次の事実が認められる。すなわち、
申立代理人は小学校に教員として勤務し、昭和四一年四月以降一ヵ月平均手取月額収入(別表記載のとおり給料に諸手当を加えたものから、公租公課、共済組合費、および職務上当然に差引かれるものを控除したものとする以下同じ)約四万円および年に月給の四・三倍の期末、勤勉手当の収入があるほか、資産としては現住居地に敷地七〇坪、ブロック建一六坪の土地家屋がある。現在申立代理人徳子、祖母(徳子の母)申立人の三名で徳子の前記収入で暮しているが、申立代理人において前記土地および家屋入手のため共済組合互助会、国民金融公庫から金を借受け、毎月共済組合に三、六一六円と四、七七〇円、互助会に四、八九〇円、国民金融公庫に約七、〇〇〇円、合計二万〇、二七六円余りを支払うという非常に無理な支出をしているためその残金二万円弱で生活をし、現在の生活程度は極めて低い。
相手方は県立○○高等学校に教員として勤務し、昭和四一年四月以降平均手取月額収入(別表記載のとおり)四万二、〇〇〇円および申立代理人と同額の賞与を得ており、資産としては九〇坪の敷地と家屋(間数五)を所有している。家族は相手方、相手方の父(無職)家事をしている妹(もう一人の妹は本年七月以降横浜に行っている)の三人暮しで相手方の収入で通常の生活程度で生活をしている。
ところで申立人の養育料としては一ヵ月分として、学費として二、〇〇〇円、衣料費として二、〇〇〇円、生活費として六、〇〇〇円が必要である旨申立人の母は述べており、厚生省児童局発表の「児童養育費調査結果報告」月刊福祉四七巻九号によると手取り二万-四万円の勤労世帯における児童の養育費は女子小学生(一年-三年)について大都会で八、二五三円となり、申立人について、前記両親の収入消費者物価指数の変動などを考慮すると、前記平均月額一万円は相当であるものと考えられる。そこで前記認定の父母の積極、消極財産収入、生活状況等諸般の事情を考慮すると、右相手方の負担すべき扶養料は月額六、〇〇〇円が相当であると考える。
従って、相手方は申立人に対し、扶養料として月額六、〇〇〇円を本件申立がなされ、かつ、相手方がその旨を了知した月である昭和四一年四月から支払うを相当と認める。そうして右終期は申立人が小学校を卒業するまでとし、以後については協議することにすることを求めているので申立どおりとする。
尚、昭和四一年四月分から同年一〇月までの分についてはすでに履行期が到来しているので即時払とし、爾後の分については毎月末日まで支払うものとする。
よって主文のとおり審判する。
(家事審判官 丹宗朝子)
別表(編略)